2022-11-29
BtoBマーケティングにおける名刺の重要性と活用法
BtoB 営業・マーケティング コラム
電話営業がインサイドセールスという名で新たな脚光を浴びています。しかし、その際にデジタル経由で獲得したリード(見込み客)の育成に注力するあまり「名刺」の重要性を忘れてはいないでしょうか。
リードの育成スパンが長期に及ぶことも多いBtoBマーケティングでは、営業のデスクの引き出しに眠っている「古い名刺」も、決して冷え切ってはいないホットリードです。
この記事では、BtoBのマーケターが軽視しがちな名刺の重要性とその活用法について解説します。ぜひ参考にしてください。
BtoBマーケティングにおける名刺の重要性
営業部がどれだけ名刺を持っているのかマーケティング部が知らない、あるいは関心すらないというのは、いわばラクダ隊がオアシスを素通りして砂漠に向かう行為です。営業部がオアシスをガードして入れてくれないのだとしたら、組織的な問題でもあります。
BtoBマーケティングの第一人者と言われる庭山一郎氏は、名刺の重要性について次のように述べています。
新規にデータベースマーケティングに取り組む企業で多くいただく質問に、「古い名刺は捨てたほうが良いですよね?」というものがある。「聴くまでもありませんが…」という感じで言われるので、私はいつも慌てて「絶対に捨てないでください」と言わざるを得ない。
なぜ慌てるかと言えば、非常に価値の高いデータをそうとは知らずに本当に捨ててしまう企業があるからなのだ。古いデータを捨てるのはコミュニケーションコストが今の数十倍も高かった10年前の発想だ。個人情報保護法の条文には過去のデータを捨てろとは一言も書いていない。
名刺の共有でマーケティング部門と営業部門にパイプができる。
案件化まで至らなかった営業部にある名刺は、3年ごとに捨ててしまうべき「古紙の束」ではなく、マーケティング部が慎重に育成していくべき貴重なリード(見込み客)です。
マーケ部と営業部がしっくりいかない、という営業組織のあるあるは、まず名刺の共有から通路をひらくのが良策です。
BtoCのセールスでは、名刺はセールスマン個人の財産かもしれませんが、相手が大きいBtoBでは営業部全体の財産なのはもちろん、デジタルで応援するマーケ部も協力できる組織全体の財産にしないと、どのような施策も成果を上げることができません。
名刺はリアルな出会いを背景に持ち、ターゲット企業の意思決定者に直結している
自社サイトの訪問者をトラッキングして、どの企業のパソコンから訪れたのかが分かっても、閲覧した人の個人名までは特定できません。その点名刺なら、氏名はもちろん部署も役職も電話番号もメールアドレスも分かります。
さらに、名刺は人と人との出会いを背景にもっているのが、デジタル情報との大きな違いです。有能な営業パーソンなら、その名刺にメモとして、名刺交換をした日付や相手の反応なども残しているはずです。このようなリアルな情報をマーケティング(リード育成)に活用しない手はありません。
名刺を個人資産から会社の資産にするにはデジタル化が必要
名刺を組織の共有財産にするには、デジタル化が不可欠です。その理由を、クラウド型名刺管理ツールのパイオニアであるsansanは「社内に眠る人脈を可視化し、営業力を強化する」と表現しています。
名刺のデジタル化がマーケティング部と営業部の具体的なパイプになる
名刺はデジタル化することで初めて、マーケ部門と営業部門が協力するための、見通しが効き風通しが良いパイプになります。
その前に、名刺のデジタル化に取り組むこと自体が両部門の協力作業です。協力しようというお題目ではなく、協力しなければならない仕事が与えられるわけです。
営業プロセスでのマーケ部門と営業部門の分業と協業については下記の記事が参考になります。
デジタル化はデータベース化されて活用可能になる
名刺のデジタル化は、印刷された文字OCR(光学認識)から始まりますが、それをデータベースとして活用するには、管理ツールを利用して次のような整理(データベース化)が必要です。
- 名寄せ(アイデンティフィケーション):同姓同名の人物が混同されないように、人物に所属企業、役職、住所、電話番号、メールアドレスなどを紐づける。
- メモ:誰がいつどこで取得したかなどの覚書を付ける
- コンタクト履歴:過去のアプローチの記録を確認できるようにする
- タグづけ:セールス対象となる製品名や育成段階、予算編成時期などのキーワードでグループ分けする
さらに、このようなデータベースを、CRM、SFA、MAなどの外部ツールと連携すれば、マーケティング施策の幅を広げ、精度を高めることも可能です。
名刺のデジタル化で手入力する場合やOCRの読み取りデータを修正する場合に留意することは、下記の記事が参考になります。
データ化した名刺の活用法
データベースとして可視化された名刺は、さまざまな切り口でターゲットを抽出してアプローチすることができます。
たとえば次のようなアプローチが可能です。
- 名刺の取得年月日からアピールするコンテンツを選択する
- コンタクト履歴が1年以上ない名刺にアプローチする
- 上位役職の名刺データにアプローチする
- タグから予算編成期にあたる名刺データを抽出してアプローチする
名刺の取得年月日からアピールするコンテンツを選択する
過去には案件化に至らなかった名刺も、その後新製品ができたり、相手企業の事情が変われば、商談が進展する可能性があります。
名刺を取得した後に製品に新機能が加わった、サービスをよりアピールできるコンテンツが作られたなどのタイミングで、再アプローチしてみましょう。
コンタクト履歴が1年以上前の名刺にアプローチする
前回のコンタクトから1年たてば、見込み客の事業課題が変化している可能性があります。コンタクト歴からターゲットを抽出するのも、有効なデータの活用法です。
2年経過、3年経過などのコールドリードから、思いがけないホットなリアクションがある可能性もあります。
上位役職の名刺データにアプローチする
商材の性質やコンテンツの内容、あるいはアプローチの時期によっては、部長以上の上位役職の名刺データにアプローチするのが効果的な場合があります。
逆に、商材によっては、宛先ではなく発信人を営業部とせずに「人事部長」「開発部長」とすることでレスポンスが高まる可能性があります。
タグから予算編成期にあたる名刺データを抽出してアプローチする
名刺データに付けたタグ(製品名や育成段階、予算編成時期などのキーワード)から、ターゲットを抽出することも可能です。
このようにデータベース化された名刺はいかようにも利用が可能で、またその結果を共有し、次のアプローチに活かすことも難しくありません。
まとめ
BtoBにおける名刺の重要性は、下記の点にあります。
- 名刺を共有することでマーケティング部と営業部にパイプができる
- 名刺の背景には人と人の出会いがある
- 名刺は相手企業の意思決定者に直結している。
名刺を組織全体の財産にするには、デジタル化が必要です。デジタル化することで次のように整理、可視化されたデータベースを利用することが可能になります。
- 人物に所属企業、役職、住所、電話番号、メールアドレスなどを紐づけられる。
- 誰がいつどこで取得したかを確認できる
- 過去のアプローチの記録を確認
- タグ(キーワード)で分類できる
名刺の活用法には下記のような多彩な切り口が考えられます。
- 名刺の取得年月日
- コンタクト履歴
- 名刺の役職
- タグによるグループ分け
このような名刺の活用は、Webで集めてWebで育てWebで刈り取るデジタルマーケティングの限界を突破できる可能性を秘めています。