2022-10-28
BtoBのダイレクトメール制作は自社製品のポジショニングから発想しよう
BtoB 営業・マーケティング コラム
Webマーケティングに注目が集まる中で、紙媒体でのダイレクトメールの有効性が忘れられる傾向がないでしょうか。しかし、紙のDMにはメールなどのオンラインマーケティングにはないリアリティと訴求力があります。
とくにBtoBでは、製品のポジショニングを明確にしてターゲットを絞ることで、高いレスポンスと費用対効果が期待できます。
この記事では、BtoBで効果的なダイレクトメールを制作するための要となる「自社製品のポジショニングからの発想」について解説します。
100通発送して5件のレスポンスを獲得するDMの要件
BtoBのDMは「100通発送して5件のレスポンスを獲得する」ことを目標にしましょう。
100通なら郵送費も8,000円ほどですが、1,000通送ると8万円、1万通なら80万円になります。
問題なのは郵送費だけでなく、多く送ろうとするほどターゲティングが甘くなることです。
その結果、1,000通送っても、1万通送ってもレスポンスは5件ほどで、しかも熱度の低いレスポンスしかないということになりがちです。
ターゲットを絞り込むために、そしてDMの内容をより顧客に響くようにするために、もっとも重要なのが「製品・サービスのポジショニング」を明確にすることです。
製品・サービスのポジショニングから届け先(ターゲット)を絞り込む
ポジショニングとは、市場における自社製品の立ち位置を定義することです。競合と比較してどんな強みや弱みがあるのかを明らかにします。
より具体的には、顧客にしたい企業の担当者に「自社製品を導入することのメリット、解決できる課題」をどう説明するかがポジショニングです。
BtoBのターゲティング(DMの送り先の絞り込み)は、上記のようなポジショニングの定義なしでは一歩も進みません。
また、DMの送り先の絞り込みでは、企業名だけではなく、その企業の誰宛に送るかも非常に重要です。せっかく的を得たターゲットにDMを送っても、「課題の解決」に興味や決定権のない人のところに届いたのでは意味がありません。
ポジショニングからコンテンツ(DMの内容)を磨き込む
的を射た企業のしかるべき人物に届いたなら、DMに「貴社にとってどんなメリットがある製品なのか」が分かりやすく書かれていたら必ず反応があるはずです。
内容でもっとも重要なのは、顧客のどんな事業課題をどう解決するかを示すことです。文章もデザインも画像もそこに的を絞って磨き込んでいきましょう。
内容のブラッシュアップのポイントには下記のようなものがあります。
- 顧客の事業課題への共感が示されているか
- 悩みや課題へのソリューションが提示されているか
- コストダウン、工数削減などのベネフィットが明示されているか
- 機能の羅列ではなく、実務に沿ったストーリーで分かりやすく説明されているか
- 数字、情報の信頼性が担保されているか
- 製品・サービスの導入実績や事例が示されているか
- 文章だけでなく、直感的な理解を助けるイラスト、写真、図表が効果的に使われているか
- 専門用語の羅列ではなく、文章表現が論理的で明瞭性があるか
- レスポンスの道筋をつけて行動喚起しているか
コンテンツ制作のポイントについて、詳しくは下記の記事をご参照ください。
「BtoBのDMでレスポンス率が高いコンテンツが備えている8つの要件」
以下では、BtoBのダイレクトメールの2つの発想の原点
- どんなソリューションを提供する製品なのか
- どの企業がそのソリューションを求めているのか
について解説します。
どんなソリューションを提供する製品なのか
「ドリルを買いにきた人が欲しいのは、ドリルではなく『穴』である」という米国のマーケティング学者の言葉は有名ですね。この言葉が示すように、BtoBのポジショニングの中核は「事業課題のソリューションの提示」です。
DMにおいてもソリューションの提示がテーマになります。カタログを送りつけて「何かご入用の品物はありませんか?」かというBtoCの事務用品のようなDMでは良い費用対効果は望めません。
セグメントが甘いとソリューションのピントがぼける
例えば、AI自動翻訳ツールが提供するソリューションもさまざまです。どんなソリューションをメインとする製品かによってポジショニング(顧客への説明の仕方)は変わってきます。
人手や経費がかかる翻訳作業を効率化しコストダウンする目的は共通だとしても、それだけでは大づかみすぎます。
- 海外マーケットの動向を素早く調査したい
- 海外の取引先とのメールのやりとりに費やす時間を減らしたい
- 社外秘の文書を安全に翻訳したい
- 英文契約書の内容を短時間で把握したい
- 自社サービスに音声翻訳機能を加えたい
- AIチャットボットを多言語化したい
- SNSへの日本語の投稿を英文翻訳するサービスを提供したい
上記のような、具体的な企業の悩みや課題への目配せ、気づきが大切です。
ニーズの多様化をふまえて「モノ」プラス「サービス」をセット
自社製品やサービスのポジショニングを定義するには、既存の顧客からヒアリングするなどで、顧客目線で製品の特徴・メリットを把握することが重要です。
競合との差別化をどう打ち出すか悩ましいときは、「モノ」プラス「サービス」を組み合わせたポジショニングも有効です。
顧客ニーズは日々変化し、多様化しつつあります。従来のポジションにこだわらずに、顧客ニーズの変化に合わせた新しいポジショニングの可能性にも着目する必要があります。
ポジショニングの仕方・定義について、詳しくは下記の記事をご参照ください。
BtoBのSTP分析はポジショニングから始めよう【実地で役立つSTP分析の考え方】
どの企業(ターゲット)がそのソリューションを求めているのか
ポジショニングを定義したら、それに基づいてターゲットをセグメントします。絞り込みが足りないとDMの費用対効果は大きく低下します。
どう絞り込むかを一般論で議論することはできませんが、社会の変化や技術の進歩によって、今まで自社製品とは縁遠いと思っていた企業がターゲットになりうることを忘れてはいけません。
町工場でAI自動翻訳がソリューションとなる企業はないのか
たとえば、町工場といえば大企業から図面をもらって製造する下請け企業という観念では、重要なターゲットを見落としてしまうかもしれません。
大企業にはない独自の技術を持つ町工場は珍しくなく、そういう企業がネット社会の実現に乗じてグローバルな事業展開をもくろんでいないとは限りません。
先述の自動翻訳ツールでも、製品の特徴によってはポジショニングを見直して、独自技術を持つ、グローバルなビジネスの可能性がある町工場をセグメントするのが効果的かもしれません。
既存顧客に提供したソリューションから、類似の課題を抱える企業を探す
具体的なターゲティングは、市場の変化などの情報を自社製品に結びつけて考察する必要がありますが、有効な手段の1つとして、既存の優良顧客のソリューション事例から、類似の課題を抱えている企業をリサーチする方法があります。
既存顧客にとってもビジネス環境は日々変化し、それにともなって事業課題も変わってきます。日頃の取引や営業活動を通じてその変化を察知して対応するのはもちろん必要ですが、既存顧客を通して見える業界の動向は、DMを制作する(新規顧客を開拓する)うえでも重要なヒントになります。
ターゲティングは狙う「市場」を定めることですが、たとえば製造業→産業機械→動力伝動装置→減速機などとセグメントしていっても、なかなか「相手の顔」は見えてきません。これに対して、最近注目されているアカウントベースドマーケティングは、「椿本チェイン」など特定の企業をby nameでターゲットとして、マーケティング部門と営業部門がデータとノウハウを駆使してアタックします。
しかし、アカウントベースドマーケティングは、用語こそ目新しいものですが、日本のBtoB営業が昔からやってきた手法です。それが現在はMA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客管理システム)を利用することで、集めたデータや情報を統合管理して活用できるようになり、この手法の有効性が再注目されているわけです。
どのBtoB企業にもある程度のアカウントベースドマーケティングのノウハウがあり、これまで集めた名刺などのデータもあります。現在持っているノウハウとデータを「DMを送る100社」の選定に活かす工夫が大切です。
アカウントベースドマーケティングについては、下記の記事をご参照ください。
「アカウントセールスとは? 中長期的な関係性を築く営業施策について解説」
まとめ
効果的なDMを制作し、効果的なターゲットに届けるには、自社の製品やサービスのポジショニングを明確に定義することが出発点です。
顧客目線で製品を捉えなおし、
- どんなソリューションを提供する製品なのか
- どんな企業がそのソリューションを求めているのか
を突き詰めることで、成功するダイレクトメールの形が見えてきます。