2023-01-30
BtoBテレマーケティングの仕組み作りと5つのポイントを解説
BtoB 営業・マーケティング コラム
コロナ禍で対面セールスが制限された3年間に、インサイドセールスやテレマーケティングに営業の軸足を置くBtoB企業が増えました。
この時期に急増したのがテレマーケティングを請け負うサービスです。「BtoB テレマーケティング」のキーワードでGoogle検索をすると、上位10記事のうち8~9がテレマーケティングのアウトソーシングサービスの記事で占められています。
テレマーケティングの外注サービスが増えたのは、自社で行うにはトークスクリプトの作成や社員の教育などに多大の手間とコストがかかることが主な理由でしょう。
一方で、フィールド営業の成果を高めるテレマーケティング(インサイドセールス)の重要性は、今後ますます大きくなると考えられます。それをアウトソーシングするのは、短期的には効果があったとしても、長期的にみると社内に広い意味での営業のノウハウが培われないことにもなります。
この記事では、BtoB企業が自社でテレホンマーケティングに対する考え方や、留意すべきことについて、分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
目次
テレマーケティングはやみくものプッシュ型営業ではない
営業にはプッシュ型とプル型があり、テレマーケティングはプッシュ型と説明されるのが一般的です。
しかし、テレマーケティングは、飛び込み営業の電話版ではありません。そもそもBtoBの営業では、何らかのプル型情報(展示会への参加、同業他社からの情報など)に基づいて、成約の可能性があるターゲットをプッシュするのが通例のスタイルでした。もし、プル型情報なしに文字通りの飛び込み営業をするだけなら、企業は大量の営業パーソンを抱える負担に耐えられないのは明らかです。
テレマーケティングでも事情は同じです。架電リストに含まれている情報が薄いほど、企業にとっては人件費が負担になり、社員にとっては手応えのない電話をかけ続けるストレスフルな業務となります。
テレマーケティングに必要なセールスイネーブルメントの仕組みづくり
テレマーケティングの架電チームには、かなりの割合で新入社員が含まれるのが通例です。電話によるアポ取りなどのインサイドセールスが、新人のファーストキャリアになる場合が多いからです。
このチームで生産性を上げるには、新人を早く仕事が「できる」ようにする(enableする)ことが急務です。
セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、新人を早く一人前の営業パーソンに育成すること、その仕組みづくりのことです。
ただし、そのために「厳しく鍛える」というより、高いところに手が届かないなら下駄を履かそう、フラフラしてうまく走れないなら補助輪をつけてやろう、というのがセールスイネーブルメントの考え方です。
新人にとって一人前になるまでのテレマーケティング業務は、なかなか成功体験を持てない、ストレスがたまる期間です。また、企業にとっては手間がかかるばかりで成果に結びつかない投資期間です。この期間をいかに短縮するかがテレマーケティングの成否を分けるポイントになります。
新人のランアップ(一人前)を組織的に支援する
セールスイネーブルメントには「各チームの先輩・上司に新人の指導を任せる」という発想はありません。その逆に、これまで上司や先輩に任せていたOJTをできるだけ巻き取った形で、一定のレベルまで教育しようと考えます。
新人を早くランアップさせるための「下駄」や「補助輪」は、具体的にはオペレーションやトークの詳細を記載した文書です。
米国流にすべての仕事をジョブディスクリプションで規定するのは、日本のビジネス風土には合わないかもしれません。しかし、テレマーケティングに関しては、言語化されたドキュメントが、新人の何よりの補助輪になります。
テレマーケティングの体制づくりに必要な5つのこと
新人をイネーブルする、早くランアップするために必要な5つのことについて解説します。どのように下駄を履かすのかという具体策です。
1.セールスする製品の価値と戦略的なポジションを教える「セールスプレイブック」
BtoB企業のテレマーケティングにまず必要なものは、自社の製品・サービスを顧客企業の視点から詳細に記載したドキュメントです。それを「セールスプレイブック」と呼んで重要視するマーケターも増えてきました。日本語に訳すとしたら「セールス虎の巻」でしょうか。
「セールスのあんちょこ」と言った方がぴったりかもしれません。あんちょことは「教科書ガイド」の俗称で、勉強が苦手な人にも教科書の内容が理解できるように、徹底的に分かりやすく解説されています。
セールスが苦手な人(新人)に補助輪を付けてやるのがセールスプレイブックです。その内容で欠かせないのは、製品が顧客のどんな課題を解決するものなのか(=顧客にとってどんな価値がある製品なのか)についての分かりやすい説明です。
製品やサービスについての、戦略、ターゲット、ゴールをしっかり理解していないと、会ったことのない電話の向こうのビジネスパーソンに自信を持って語りかけることはできません。
2.検品されたターゲットリスト
インサイドセールス(テレマーケティングチーム)は、マーケティングチームから見込み客のリストを受け取って架電し、ナーチャリングした案件化の確度の高いリストをフィールド営業にパスします。
マーケティングからインサイドセールスへ、インサイドセールスからフィールド営業への、それぞれの見込み客リストのパスでは、受け渡しをする双方がその品質について合意していなくてはなりません。
テレマーケティングの担当者は、架電リストの入手経路やマーケティング部が見込み客に提供したメールなどのコンテンツについて知っていないと、トークスクリプトのどのシナリオで行くのかなどの判断ができないのです。
3.複数のシナリオとFQAがあるトークスプリト
ターゲットの業態やナーチャリングプロセスに応じた複数のシナリオを備えたトークスクリプトが必要です。
トークスプリトは「ある」だけではなく、成功したケース、失敗したケースをスピーディーに反映して改訂していく仕組みが必須です。
社内のもっともレベルの高いテレマーケティングの会話に、新人がいつでも接することができるようにしたいものです。
フィールド営業がテレマーケティングに期待している情報とされているのが、いわゆる「BANTCH情報」です。BANTCHとは、Budget(予算)、Authority(決裁者)、Needs(ニーズ)、Timing(検討時期)、Competitor(競合)、Human resources(人員体制)頭文字です。この中でもっとも重要なのは「ニーズ」です。たとえ潜在的にでも顧客にニーズや課題がなければ、他の要素は無意味です。
フィールド営業はもちろんですが、テレマーケティングでも見込み客の潜在的なニーズに鼻が利くようになれば、大きな武器になります。この点からもテレマーケティングは、できれば外注だけでなく社内でも行いたいところです。
4.間接業務を減らす補助ツール
テレマーケティングの担当者は、勤務時間の6割をデータ入力や報告書作成、会議などの間接業務に奪われて、顧客と電話で話をするコア業務は4割ほどに過ぎないといわれています。
こんなときに活用したいのが、最近とみに種類が増えて、使いやすさも増した、業務効率化のためのITツールです。
セールスプレイブックもデジタル化されて「こんなときはどう答える」などのヒントを架電中にパソコン画面にポップするなど、業務を効率化する補助機能を備えたものがあります。
5.日々の成果を評価するKPI
インサイドセールスのKPIには次のようなものがあります。
- 電話をかけた数
- 電話が通じた率
- 担当者につながった率
- フィールド営業にトスアップできた数
- トスアップ率
- トスアップまでにかかった時間
トスアップは数や率だけでなく、その質が重要です。数は多くないが成約率の高いトスアップをするテレマーケターは正当に評価されなくてはなりません。
テレマーケティングにはデジタルマーケティングの援用が有効
テレマーケティングはアナログな手法と思われがちですが、ターゲットリストの作成においても、イネーブルメントの仕掛けづくりやKPIの設定でも、デジタルなデータ活用が必須です。
近年、テレマーケティングの重要性が増したことも、その外注サービスが増えたことも、ITツールを援用できるようになったことが大きな背景要因です。
経済産業省に言われるまでもなく、あらゆる産業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)は避けて通れない道になっています。その意味でも、デジタルが苦手だからといって、テレマーケティングを外注に頼り切りなのはおすすめできません。