2023-01-31
成果の出るセールストークの組織化と実現するための5つのポイント
BtoB 営業・マーケティング コラム
セールストークは「ビジネスマナー」のような一般的な知識ではありません。接遇訓練の講師を招いて言葉遣いを学んでも、その効果は限定的なものにとどまります。
特にBtoBの営業では、セールストークは、具体的な販売戦略や商品知識に紐づいた「当社のこの製品」に関するトークはどうあるべきかがテーマになります。
この記事では、成果の出るセールストークを個人の話術としてではなく、組織が取り組むべきテーマとして解説します。
BtoBのセールストークとは
BtoBのセールスは企業が顧客なので、成約までのプロセスに複数の人間が関与し、時間もかかります。そのプロセスを個人でカバーすることはできず、セールストークにおいても組織ぐるみの応援が必要です。
成果が期待できるのは顧客のベネフィットを想定したセールストーク
セールストークの研究は、具体的な商品に紐づいたものでなくてはならず、一般的な「セールストークのコツ」を学ぶというアプローチは実り多い結果を期待できません。
セールストークには、見込み客を増やすためのインサイドセールスやアポイントを取った後の対面セールスなど、さまざまなレベルがあります。インサイドセールスにも、営業リストをもとに電話をかけるアウトバウンドコールと、問い合わせに答えるインバウンドコールがあります。
どのレベルのセールストークでも、核となるのは具体的な「この商品(サービス)」です。この商品はどんな顧客にどんなベネフィットを提供するかを把握して、的確に伝えるのが、成果の出るセールストークです。
BtoBのセールストークは一発勝負ではない
インサイドセールスでもフィールドセールスでも、BtoBのセールストークにはナーチャリング(見込み客の育成)のプロセスがあり、顧客との対話は長期間におよびます。
対話の中で顧客のニーズと課題を察知して、そのソリューションとなる自社製品の情報を提供していきます。
顧客のニーズを察知できたら、さらに対話を進めて、予算、決裁者、検討に要する期間、競合の存在などについて情報収集をし、クロージングに繋げます。
BtoBではこのナーチャリングプロセスを個人が管理することはなく、組織全体が進捗状況を把握して、必要な支援や次の担当者へのバトンタッチを行うことが必要です。
「成果の出るセールストーク」は個人ではなく組織のテーマ
ネット上にはセールストークを営業パーソンの個人的な「コツ」として説いているものが多く見受けられます。しかし「成果の出るセールストーク」は組織のテーマであり、営業パーソンが個人的に取り組むテーマではありません。
その理由は、上述のように、BtoBのセールストークは具体的な製品の販売戦略と顧客分析に基づく必要があり、長期的で組織的なナーチャリングプロセスが欠かせないからです。
成果を左右する新人のセールストーク教育
見込み客に電話をかけるインサイドセールスは、多くの場合、BtoB企業の新入社員の「最初の仕事」になります。その際に大切なのは、新人を「厳しく鍛える」ことではなく、徹底的にサポートして早く一人前にしてやることです。
新人がチームの一人前の「乗組員」になることをオンボーディングと言いますが、コストがかかるだけの見習い期間をいかに早く通過させ、オンボーディングさせるかが、企業の業績を左右します。
営業チームの一員としてオンボーディングしたと言えるのは、顧客と製品について話ができるようになったときです。組織は、そのために新人にどんな材料を与えことができるか、どんな手助けが可能かを真剣に考える必要があります。
成果の出るセールストークを組織で実現するための5つのポイント
組織として成果の出るセールストークを実現するポイントは次の5つです。
- 「知っておくべきこと」をきちんと教える
- 日々の業務で使える、プロセスに応じたトークスクリプトを与える
- ナーチャリングの段階に応じて顧客に見せることができるコンテンツを用意する
- 成功例をケーススタディとして示す
- KPIを設定して日々の業務を評価する
1.営業パーソンが「知っておくべきこと」をきちんと教える
心理的な余裕をもってセールストークするためには、製品(サービス)の全体像を一定レベルまで理解していなければなりません。どのマーケットでどんなターゲットに何を訴求するかという販売戦略をしっかりとガイダンスする必要があります。
また、その戦略の中での自分のタスクとゴールは何かを明確に伝えなければなりません。
セールストークはつねに臨機応変が求められるので「とりあえずこれとこれをやれ」という教え方では、新人は自信をもってトークすることができません。戦略という全体像の中で、自分の仕事の前後関係、文脈を理解して初めて顧客の心に響くセールストークが可能になります。
2.日々の業務で使える、プロセスに応じたトークスクリプトを与える
インサイドセールスでは、具体的な製品に紐づき、ナーチャリングのプロセスに応じた、トークスクリプトが必要です。
ドラマのシナリオなら相手役の台詞も決まっていますが、セールストークでは相手が何を言い出すかは分かりません。しかし、このプロセスでなら顧客はどんなことを言うのかは想定可能です。
実績に基づき、さまざまなケースを考慮した、対象商品のセールスのためのトークスクリプトは、製品理解を深めるうえでも役立ち、臨機応変のトークを手助けしてくれます。
まだ顧客と対面で話をしたことがないインサイドセールの新人は、製品に紐づいた具体的なトークスプリトによって、成果の出るセールストークのイメージをつかむことができるのです。
3.ナーチャリングの段階に応じて顧客に見せるコンテンツを用意する
見込み客の製品への関心を高めていくには、口頭でのトークだけでは不十分です。ナーチャリングのプロセスに応じて、適切にコンテンツを提供しなければなりません。
セールストークを補完するコンテンツには次のようなものがあります。
- メールマガジン
- 自社サイトのブログ
- ホワイトペーパー
- ウェビナー
- どんな課題を抱える顧客が購入したのか
- その顧客にどんなアプローチが有効だったのか
これらのコンテンツは、口頭で説明した内容について質問されたとき(見込み客が食いついてきたとき)に提供すると効果的です。
コンテンツの中核となるのは、自社の製品が解決した顧客の課題の事例です。顧客は自分が製品を理解するためだけではなく、上司に説明するためにもコンテンツ(資料)を必要とします。それにふさわしいコンテンツがないと、セールストークのプロセスはなかなか前に進みません。
さらにプロセスが進むと、コンテンツは稟議の申請や決済承認のための補足資料にもなります。その際に、顧客が解決したい課題の要因とそのソリューションについまとめたホワイトペーパーがあれば、成約の可能性が高まります。
さまざまなプロセスで効果のあったコンテンツを、セールストークの中で使いやすいように体系立てて用意することは非常に重要です。提供したコンテンツ(情報)に対してどの役職の人がどう反応したかを事例として編集しておくことが有益です。
一日に一定の架電数をこなさなければならない担当者に、未整理のコンテンツ群から素早く適切なコンテンツを取り出して、タイミングよく顧客に提供するのを期待することはできません。
製品やサービスのベネフィットをよく示すコンテンツは、見込み客に自社の潜在的な課題に気づかせる効果もあり、ニーズの掘り起こしにも役立ちます。
4.成功例をケーススタディとして示す
セールストークの成功例は、チームの財産として共有されることで組織全体の営業力が高まります。成功に尽力した個人は正当に評価されるべきですが、そのノウハウが属人化したのでは、成果は限定的です。
さまざまなタイプの成功例について言語化して、チームのベストプラクティスのガイドにする必要があります。
また、成功は「コツ」として伝授されるのではなく、そのケースで役立ったコンテンツなどの具体例とともに、再現可能なケーススタディとして構築されるのが理想です。
5.適切なKPIを設定して日々の業務を評価する
インサイドセールスに目標とKPIの設定は必須ですが、架電数やフィールド営業へのトス数を数字だけで評価していると、ナーチャリングプロセスにいつの間にか見えにくいボトルネック(パイプが詰まった個所)を生み出すことになります。
トスする数は少ないがフィールド営業でのクロージング率が高い場合は、それも正当に評価されなければなりません。
KPIが適切でないと、インサイドセールスとフィールドセールに相互不信が生じがちで、日々の業務に対するモチベーションも低下します。
まとめ
成果の出るセールストークは、BtoBにおいては個人の話術やコツではありません。具体的な商品知識とターゲットニーズに基づいて、組織ぐるみで台本を作り、コンテンツを用意する必要があります。
長期に及ぶことが多いナーチャリングプロセスを個人に任せるのではなく、組織として管理し支援しなければなりません。
とくに新人の担当者には、オンボーディングを早めるために最大のサポートが必要です。製品のベネフィットとターゲットのニーズについてできるだけリアルなイメージが持てるようなケーススタディが必要です。