2022-06-08

BtoBマーケティングでのペルソナの必要性と、現場で使える設定方法

BtoB 営業・マーケティング コラム

BtoBのマーケティングにおいてもペルソナの設定が必要だと言われる一方で、「ペルソナは何の役に立つのか」「ペルソナなんて無意味だ」という疑問の声も聞かれます。

この記事では、BtoB企業にとってのペルソナ設定の意味と活用場面、実際にどのようにペルソナを設定したらよいのかを分かりやすく解説しています。

ペルソナとは

ペルソナとは仮想された顧客代表です。実在する人物であるかのように、その人物像を価値観や行動パターンが見えてくるまで作り込むことが重要です。

TVで連続ドラマを観る人が主人公の次の行動を予測するように、マーケターはペルソナを設定することで、彼(彼女)の反応や行動を予測します。

連続ドラマが回を重ねるにつれて主人公の行動を予測しやすくなるように、ペルソナもていねいに肉付けされているほど行動を予測しやすくなります。

ペルソナの2つの構成要素

ペルソナは「デモグラフィック」と「サイコグラフィック」の2つの要素で構成されます。

デモグラフィックな要素 : 年齢、性別、家族、所得、職業、学歴など

サイコグラフィックな要素 : 価値観、ライフスタイル、性格、好みなど

例えば、豊臣秀吉なら「尾張中村の農家の生まれ」はデモグラフィックな要素で、「鳴かぬなら、鳴かせて見せようホトトギス」はサイコグラフィックな要素です。

全12巻の「太閤記」を書いた小説家・吉川英治の頭の中にあった秀吉のペルソナが、どれほど厚く肉付けされていたかは想像に余るものがありますが、優秀なマーケターほどペルソナの作り込みは詳細にわたります。

BtoBとBtoCで異なるペルソナ設定

BtoCでは個人のペルソナを設定するだけですが、BtoBは法人と意思決定者(バイヤー)、担当者など、複数のペルソナ設定が必要になります。

顧客となる企業(法人)にも業種や事業規模などのデモグラフィックな要素だけでなく、企業風土、企業ビジョンなどのサイコグラフィックな要素があります。

バイヤーや担当者は、法人のペルソナ(組織風土)に影響されたり、枠をはめられたりしながら、個人のペルソナを形成しています。

ペルソナとターゲットの違い

ターゲットは絞り込んでも一定の幅を持ちますが、ペルソナはピンポイントの「ある人物」を仮想します。

生身の人物で「35歳~45歳」ということはあり得ないので、35歳~45歳というターゲット層なら、ペルソナは例えば42歳と想定します。年収600万円~700万円なら、例えば680万円と想定します。

顧客代表を「特定の1人」に絞ることで、そのペルソナにキャラクターや背景、ストーリーを肉付けすることが可能になります。

このような、ぎりぎりに絞った顧客代表を設定するのは、その人物をイメージしながら製品やサービスを研ぎ澄ましていくことが、結果的に多くのユーザーの支持を得ることになる、という考え方によります。

ターゲティングについては、次の記事を参照してください。
BtoBのターゲティングに必要な4つの視点と6つの判断基準をわかりやすく解説

本当に役立つペルソナ設定は簡単ではない

BtoCで個人のペルソナを設定するのも簡単ではありませんが、BtoBは法人と意思決定者(バイヤー)、担当者など複数のペルソナ設定が必要になり、さらに難しくなります。

マーケターの間でも「ペルソナ設定は本当に必要なのか」「役に立つのか」という疑問があるのは、役に立つペルソナ設定ができていないことの現れとも言えます。

肉付けの薄いペルソナを設定しても、マーケターの頭の中でペルソナが動き出すことはなく、行動を予測することはできません。

また、一応ペルソナを設定したが活用されない、という状況もありがちです。

必要性が疑われたり、活用されないペルソナは、つくり込みの甘いペルソナではないか、と反省してみることも必要でしょう。

ペルソナを設定するメリット

肉付けされ、キャラクターが付与されたペルソナは、問いかけると答えてくれるペルソナであり、反応や行動が予測できるペルソナです。

このようなペルソナを作ることで、チームの目線が統一され、施策の一貫性が保たれます。

判断に迷ったときの意思決定もスピードアップされます。

チームメンバーの「顧客像」にズレがなくなる

ペルソナの設定により顧客像の共通理解が深まり、それが会議の前提にもなるので、いちいち擦り合わせする必要がなくなります。

チームの顧客像にズレがあり、個々のメンバーによって行動ベクトルの矢印の向きが異なると、チームの総合力が弱くなり、意気も上がりません。

施策の焦点を絞り込める

ペルソナを設定することで、誰に商品を届けるのか、誰にセールスをかけるのかの「誰に」が、幅のある「ターゲット」ではなく、ピンポイントの「人物」になります。

「顧客」が抽象的な概念ではなく、バーチャルではあるがリアルな存在になるのです。そのリアルな顧客の反応を予測することで、施策の焦点を絞り込むことができます。

オンライン施策では難しい役職層にアプローチ!|ターゲットリスト総合ページ

設定したペルソナはどう利用されるのか

小説家の頭の中にある物語の主人公のように、問いかけると答えるペルソナ、場面を設定すると動き出すペルソナを設定できれば、実り豊かな利用法がいろいろあります。

ユーザーニーズに過不足のない商品開発

商品開発のプロジェクトでは、チームの力を1つの方向に定めるために、ペルソナの設定が必須です。

システム開発の土台となる要件定義(何をどうシステム化するかを決める)では、ユーザーのペルソナが設定されていないと手も足も出ません。

また、ペルソナのつくり込みが甘いと、追加要件が発生したり、余計な要件を入れ込むオーバーエンジニアリングが生じがちです。これはシステム開発に限らずあらゆる製品開発で言えます。

ユーザーの心に響くコンテンツ作り

Webの発達やコロナ禍の状況にあって、BtoBにおいてもインサイドセールス、あるいはインバウンドマーケティングの比重が高まっています。見込み客の発掘にHPやメールマガジン、Web広告、SNSなどを活用するコンテンツマーケティングが主流になってきたのです。

メールの文面ひとつをとっても、ユーザーの心に響くコンテンツを制作する上で、ペルソナの設定は非常に重要です。

コンテンツの企画や内容をあれこれ考えるうちに、方向がズレてくるのはよくあることですが、そんなときに「ユーザー目線」という原点に立ち返るためにペルソナが役立ちます。

戦略策定の土台となり、会議が生産的になる

ペルソナは、セールスプロモーションの立案、実行の土台となり、会議の時間の節約になります。

プロモーションの戦略、施策を練るときに、チーム内にユーザー像の違いがあるほど、会議はもめて、非生産的な時間が費やされます。

また、ややもすると認識の食い違いが生じがちな、マーケティング部門と営業部門の連携も、ペルソナの設定によってスムーズになります。

BtoBのペルソナの設定方法

BtoBのペルソナ設定を、教科書どおりに「企業の属性を定義する」ところから始めようとしても、実際には絞り込みに難儀することが多いものです。モデルとなる「生きた企業」を仮想するところまでは、容易に到達できません。

そんなときは逆の発想で、既存の顧客からモデルを探すのが有効です。

成約までの苦労は多かったが、稔りも大きかった既存顧客に着目する

既存顧客の中に、自社の強みや特徴が評価されて、お互いにメリットが大きい関係を維持している顧客はいないでしょうか。

ペルソナのモデルとしてもっともふさわしいのが、このような「簡単には他社に乗り換えられない顧客」です。そういう顧客が増えるほど、自社の経営は安定し、発展するからです。

モデルとなるA社が見つかったら「なぜ、A社と自社はこのような良い関係を維持できているのか」を分析します。

具体的には、自社のどのような強みがA社にメリットをもたらしているのか、A社の課題解決に自社がどのように寄与しているのか、などを明確にしていきます。

このように、競合にはない自社の強みによって獲得した顧客がペルソナのモデルになります。

モデルとした既存顧客の属性を調べる

次に、上記のモデルの業種や企業規模などの属性を記述して、ペルソナとして設定できる本質的な属性かどうかを検討します。

モデルがあれば、いくらでも詳細な属性の記述が可能ですが「良い関係」にとって本質的でない属性を加えすぎても、かえってペルソナのイメージが不鮮明になります。

企業の属性だけでなく、担当者や意思決定者、経営者のデモグラフィックな要素、サイコグラフィックな要素も記述しましょう。

既存顧客にインタビューする

モデルについての手持ちの材料だけでなく、改めて顧客の担当者などに「自社とお取引いただける理由」「御社の課題・お悩み」「弊社へのご要望」などをインタビューします。

「ご挨拶に」などの名目でもよいので、できるだけ意思決定者など上層部へのインタビューも行いましょう。

顧客に何らかの意味で接触する機会がある、社内の人間へのヒアリングも役に立ちます。

チームで話し合い、練り上げる

上記の情報を持ち寄って、マーケティング部と営業部で話し合って、ペルソナを塑形します。

この話し合いの過程で、チームが共有する「使えるペルソナ」が練られていきます。

BtoBのペルソナ設定のポイント

BtoBのペルソナ設定では、バイヤーペルソナの設定と組織風土の設定も重要なポイントです。

バイヤーペルソナの設定

BtoBでは、バイヤー(購入決定者)のペルソナ設定も重要です。とくに、コンテンツマーケティングでは、バイヤーのペルソナをイメージできなければ、コンテンツの焦点を絞ることができません。

また、商談までこぎつけた場合も、ユーザーとなる組織が意思決定にあたり何を重視するかは、バイヤーのペルソナに左右される面が少なくありません。

企業風土や経営者の人柄も設定する

上記とは逆に、バイヤーのパフォーマンスは組織風土や企業ビジョンによって左右され、方向づけられます。

法人のペルソナは、デモグラフィックな属性だけでなく、企業ビジョンや企業風土、経営者のキャラクターなどのサイコグラフィックな要素まで設定することが重要です。

まとめ

BtoB企業にとっても、Webで見込み客を獲得するインバウンドマーケティングでは、ペルソナの設定は欠かせません。

BtoCに比べて難易度の高いBtoBのペルソナ設定ですが、モデルとなる既存客からていねいに設定していけば、マーケティング部や営業部のパフォーマンスのベクトルが合う「使えるペルソナ」を作り上げることができます。

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