2022-04-28
販路拡大とは?方法や戦略の建て方、手順、成功のコツを詳しく解説
BtoB 営業・マーケティング コラム
販路拡大とは、商品・サービスを販売する経路を増やすことです。販路拡大では、売上増加やリスク分散のメリットを得られます。販路拡大の具体的な方法や手順、成功のコツなどをわかりやすく解説します。
販路拡大とは
はじめに、販路拡大の意味やチャネルの概要、重要性をお伝えします。
販路拡大の意味
精選版 日本国語大辞典によると、販路とは「商品を売りさばく方面」を指します※1。
つまり、販路拡大とは「商品やサービスを売る方面(=対象)を拡大すること」です。わかりやすく言うと、新規の顧客や取引先を増やすことであり、販路開拓とも呼ばれます。
販路拡大を行う上で知っておくべき3つの「チャネル」
販路拡大における販路(チャネル)とは、具体的に下記3つを指します。いずれか特定のチャネルに偏ることなく、3種類あるチャネルを上手く組み合わせながら、多面的な視点で販路拡大の施策や戦略を考えることが重要です。
コミュニケーションチャネル
顧客に商品を認知してもらうための経路(方法)のことです。具体的には、販売促進や広告宣伝の施策が当てはまります。
流通チャネル
顧客に商品を届けるための経路です。卸業者や物流業者の手配(どのようなところを選ぶか)が該当します。
販売チャネル
商品を顧客に販売するための経路です。実店舗やECサイトなどの商品を販売する場所が当てはまります。
販路拡大の重要性
新規事業はもちろんのこと、すでに収益が出ている既存事業においても、継続的に販路拡大を図ることは重要です。その理由は以下の3点です。
- 顧客1社(1人)あたりから得られる収益には限界があるため、販路を拡大しないと売上の伸びがやがて鈍化する
- 競合他社や新規参入企業に顧客や取引先を取られてしまい、既存の販路を失うリスクがある
- より自社にとって好ましい販路(利益率が高いなど)が他に存在する可能性がある
販路拡大を行うメリット
販路拡大を行うメリットは以下の2点です。
売上の増加
顧客や取引先、物流業者などを増やすことで、商品を流通・販売する対象が増えるため、結果的に売上の増加につながります。また、より高い単価で商品を販売できる販路や、販売までのコストを抑えることができる販路を開拓できれば、売上や利益率のアップも期待できるでしょう。
リスク分散
特定少数の販路に注力していると、新規参入や競合などに顧客や取引先等を奪われてしまい、事業の続行が困難となるほど会社全体の売上や利益が減少するリスクがあります。
一方で、販路拡大によって商品の流通・販売対象を増やしておけば、他の販路から得られる収益があるため、多少顧客や取引先を失っても会社全体で被るダメージを最小限に留めることが可能です。
販路拡大の手順
この章では、効率的に販路拡大を図る手順を紹介します。
手順1:4Pの整理
まずは、現在及び今後の事業について、以下に挙げたマーケティングの4Pを整理しましょう。
- Product(商品):商品の品質やパッケージ、デザイン、アフターサービスなど
- Price(価格):価格設定の適正さ、商品1単位の利益率(≒値入れ率)など
- Place(流通):流通業者、流通・販売の方法、商品の輸送手段、商品の販売場所など
- Promotion(プロモーション):広告媒体、広告の中身、広告予算、販売員のスキルなど
現在取り扱っている商品・サービスの4Pを整理することで、「自社がどのような価値を顧客に提供しているか」、「現時点のマーケティング施策・戦略が適切かどうか」を整理できます。
手順2:STP分析の実施
STP分析とは、以下3つのプロセスを経ることで、効率的に市場選定やターゲット顧客の特定、商品の売り出し方などを明確にする手法です。
- Segmentation(セグメンテーション):ある市場を同種のニーズを有する複数のグループに分類する
- Targeting(ターゲティング):複数に細分化したグループから、自社商品を販売するグループ(顧客層)を決定する
- Positioning(ポジショニング): ターゲットとした顧客層に対して、自社のポジション(価格帯や商品のイメージなど)を決定する
たとえ優れた商品・サービスを持っていても、それを最適な市場で最適な顧客に、最適な立場で提供できなければ、売上の伸びが鈍化したり、十分な売上を確保できなかったりする可能性が出てきます。
そこで、4Pによって自社商品を分析した後は、STP分析によって自社商品を販売する市場・顧客、および販売するにあたっての最適なポジションを明確化することがおすすめです。
手順3:戦略や施策の検討
4Pの整理とSTP分析を行うことで、自社商品の価値を理解し、かつ自社商品にとって最適な市場や顧客、ポジションを明確化できます。
そこで次に、分析結果に応じて販路拡大の戦略や施策を具体的に考えていきます。簡単な例を出すと、飲食店を相手に、高級路線のポジションで業務用食品を販売するビジネスであれば、「ダイレクトメールや営業を通じて、見込み客に自社商品の価値を丁寧に伝える」などの施策を策定します。
手順4:販路拡大施策の実施
最後に、決定した販路拡大施策を実施します。定期的に施策の効果を検証し、必要に応じて施策の改善を図ることがポイントです。
販路拡大における戦略の立て方
販路拡大の戦略(方向性)を立てる際には、以下3つの点を意識しましょう。
BtoBとBtoCの違いを理解する
商品・サービスの販売対象が一般の消費者か法人であるかによって、最適な販路拡大の戦略は変わってきます。
たとえばBtoCビジネスと比較して、BtoBビジネスには「商品購入の決定プロセスに時間を要する」、「消費者と比べて、より合理的に購入の検討を行う」などの特徴があると言われています。
上記の特徴より、BtoBにおける販路拡大では、以下2つの戦略が有効であると考えられます。
- 既存顧客からの紹介で販路拡大するなどの方法で、信頼関係の構築や商品説明にかかる時間や労力を削減する
- 商品の性能をデータで示したり、相手企業が商品の利用で得られるメリットを詳細に説明したりする
上記はあくまで一例であり、BtoBとBtoCのビジネスの間には様々な違いがあるため、まずは両者の違いを理解した上で最適な戦略を検討しましょう。
プッシュ戦略とプル戦略を使い分ける
販路拡大の戦略は、プッシュ戦略とプル戦略の2種類に大別できます。各戦略が適している状況を理解し、自社の状況やターゲット企業の特性に応じて戦略を使い分けることが大切です。
プッシュ戦略とは、企業側から積極的に商品を売り込んでいく戦略です。一方でプル戦略とは、顧客の購買意欲を掻き立てることで、顧客からの指名買いを促す戦略です。各戦略のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
プッシュ戦略 |
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|
プル戦略 |
|
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O2Oマーケティングを実践する
O2Oとは、「Online to Offline」の略です。
O2Oマーケティングは、インターネット上の場(Webサイトなど)から、オフラインの場(実店舗やオフィスなど)に顧客を誘導する手法です。具体的には、自社メディアで見込み客を囲い込み、そこから製品の展示会に誘導し、製品を利用するメリットなどを詳細に伝える施策が考えられます。
販路拡大の効果を測定しやすい点や、オフライン施策またはオンライン施策のみを行う場合と比べてより広範囲の見込み客を獲得できる点など、O2Oのメリットは大きいです。
オフラインとオンラインのいずれかに傾倒するのではなく、お互いを組み合わせることで、より販路拡大の効果を高めることができるでしょう。
販路拡大を実現する方法
この章では、販路拡大を実現する具体的な方法について、オンラインとオフラインに分けて解説します。
オンラインで実施する販路拡大の手法6選
オンラインで実施する販路拡大の手法には、主に以下6種類があります。
Webサイトによる集客
有益な情報や製品に関連する情報を発信し、見込み客を育成・獲得する手法です。
- メリット:長期的に安定した効果を期待できる、徐々にコスト・労力を減らせる
- デメリット:結果がでるまでに時間がかかる
SNSによる情報発信
TwitterなどのSNSで、見込み客に役立つ情報を発信する手法です。
- メリット:短期間かつ低コストでたくさんの見込み客を獲得できる可能性がある
- デメリット:不祥事や問題発言などの情報が拡散されるリスクがある
ECサイトへの出店・商品販売
モール型のECサイトなどに出店し、そこで商品を販売することで販路拡大を図る手法です。
- メリット:集客しやすい、商品の購入に直結しやすい、実店舗の出店コストを抑えることが可能
- デメリット:手数料がかかる、規則にしたがって運営する必要がある
メールマーケティング
見込み客に対して、有益な情報などをメールで配信する手法です。
- メリット:購買意欲を高めることが可能(成約率が高まる)
- デメリット:配信リストやメール内のコンテンツを作成する手間が発生する
インターネット広告の活用
インターネット上に広告を出稿する形で販路拡大を図る手法です。
- メリット:短期間で販路拡大を図ることができる
- デメリット:広告費が発生する、ターゲットに応じた広告の内容を考える必要がある
ウェビナーの開催
オンライン上でセミナーを開催し、見込み客にとって有益な情報や自社製品の情報を伝える手法です。
- メリット:場所や人数の制限を受けない、コストが比較的かからない、自社製品の情報を詳細に説明できる
- デメリット:参加者の反応を確認しづらい
オフラインで実施できる販路拡大の手法5選
オフラインで実施できる販路拡大の手法には、主に以下5種類があります。
ダイレクトメール(DM)の発送
有益情報や自社製品の情報が記載されたハガキやチラシなどを、直接見込み客に郵送する手法です。
- メリット:文章や写真を駆使して魅力的かつ的確に伝えたい情報を紹介できる、一度に多くの見込み客にアプローチ可能
- デメリット:送付先リストの作成や郵送にコスト・労力がかかる
展示会への出展
特定テーマ・業界などに関する展示会に出展する手法です。
- メリット:購買意欲が高い見込み客を獲得しやすい、見込み客と双方向的なやりとりが可能
- デメリット:事前準備や出展に多大なコストや労力がかかる
セミナーの開催
見込み客が関心を持ちそうなテーマでセミナーを開催する手法です。
- メリット:自社製品の情報を詳細に説明できる、見込み客と双方向的にやり取りできる
- デメリット:人数に制限がある、準備や開催にコストや労力がかかる
既存顧客からの紹介
既存顧客から新たな顧客や取引先を紹介してもらう手法です。
- メリット:商談につながりやすい、成約しやすい
- デメリット:既存顧客からの信頼を失うリスクがある
飛び込み営業
アポイントを事前に取らずに、企業のオフィスや個人宅を訪問する手法です。
- メリット:双方向的にやり取りできる、製品の良さなどを詳細に説明できる
- デメリット:労力や人件費がかかる、企業のイメージが低下するリスクがある
販路拡大が成功する可能性を高めるコツ
最後に、販路拡大が成功する可能性を高める3つのコツを紹介します。
外部の専門家からのサポートを得る
自社のビジネスモデルや顧客を深く理解し、販路拡大で着実に成果を出すことは簡単ではありません。社内の人材のみで販路拡大を実現することが困難であれば、外部の専門家(プロのマーケターなど)からサポートを得ることがお勧めです。
外部の専門家に相談すれば、自社にとって最適な販路拡大の手法をアドバイスしてもらったり、結果につながる施策を代行してもらえたりするでしょう。
補助金や助成金を最大限に活用する
手法によって差は出るものの、予算をより多く投じた方が、販路拡大の効果は大きくなります。とはいえ、中小・ベンチャー企業にとって、マーケティングに十分な額の予算を投じることは難しいでしょう。
そこでオススメなのは、自治体などの公的機関が実施している補助金や助成金の活用です。こうした補助金・助成金には、中小企業に向けて販路拡大にかかる費用の一部を補助するものがあります。
補助金や助成金は基本的に返済不要なので、条件を満たしたり審査に通ったりさえすれば、資金繰りが悪化する心配をせずに販路拡大に資金を投じることができるでしょう。
費用対効果を意識する
予算や人員などのリソースが限られている中小・ベンチャー企業にとっては、費用対効果を意識して販路拡大の施策を選択・実施することが重要です。
たとえ多額の収益を生み出せる施策でも、多額の予算がかかる場合は、予算の確保が困難となったり、利益率が低くなったりします。
費用と収益をデータとして都度分析し、「少ないコストで大きな収益を生み出せているか」を常に見極めるようにしましょう。
まとめ
販路拡大は、売上増加やリスク分散に効果的な施策です。ダイレクトメールやウェビナーの開催など、販路拡大の方法は多岐にわたります。各手法のメリットとデメリット、顧客の特性などを理解した上で、最適な手法を選ぶことで販路拡大を成功させましょう。