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海外営業・マーケティングコラム

2024-11-14

ベトナム外食市場で日本企業が成功するための視点

ベトナムは、経済成長と人口増加により東南アジア地域の中でも特に活気ある市場として注目を集めています。特に外食産業においては、都市化の進展とともに消費者のライフスタイルが多様化し、外食ニーズが急速に拡大しています。国内人口の約70%が35歳以下という若い世代の多いベトナムでは、外食が日常生活に根付きつつあり、さまざまなタイプの飲食店が現地での需要に応えています。

また、COVID-19の影響でデリバリーサービスやテイクアウトの需要も急増し、GrabFoodやShopeeFoodなどのフードデリバリーアプリが普及するなど、食の提供方法にも変化が見られます。こうした背景のもと、ベトナムの外食市場には、伝統的なベトナム料理だけでなく、海外からの多様な食文化も取り入れられ、多様化が進んでいます。

本記事では、ベトナムの外食産業の現状と主なトレンド、競争環境について、統計データや専門機関のリサーチをもとに解説します。

ベトナムの外食市場の現状と主要トレンド

ベトナムの外食産業は、近年の経済成長と都市化の進展により急速に発展しています。ベトナム統計総局によると、2019年の外食市場規模は約586兆ベトナムドン(約2兆7,559億円)に達しており、過去数年間で安定的な成長を遂げてきました(※1)。この成長は、都市部を中心とする中間層の増加や所得向上が背景にあり、特に都市部の若年層を中心に外食が定着していることが特徴です。

1.若年層による外食需要の増加

ベトナムの人口は約70%が35歳以下であり、若年層の高い割合が外食市場の成長を支えています(※1)。都市部では外食が日常的に行われ、若い世代にとって外食は生活の一部となっている状況です。この世代は新しいものや多様な食文化への関心が高く、西洋風のカフェやレストラン、ファストフードチェーンなどが急速に人気を集めています。

2.デリバリーサービスの急成長

COVID-19の影響で、ベトナムでもデリバリーサービスの利用が急増しました。特に、GrabFoodやShopeeFoodなどのフードデリバリーアプリが普及し、外食産業の一部として定着しています。これにより、従来の店舗型の外食ビジネスだけでなく、デリバリー専門の飲食店やテイクアウト対応店舗も増加しており、消費者にとって利便性が向上しています(※1)。

3.健康志向と多様な食文化への関心

消費者の健康志向が高まっていることも、ベトナムの外食市場に影響を与えています。オーガニックや無添加の食品、ベジタリアンメニューといった健康に配慮した選択肢を提供するレストランが増え、消費者の関心を集めています。また、ベトナムでは日本食や韓国料理といった他国の料理も人気を博しており、こうした多様な食文化が市場の一部として確立されています(※1)。

4.都市部での西洋風飲食店の拡大

ハノイやホーチミンといった大都市では、カフェ文化やファストカジュアルといった西洋風の飲食業態が若年層を中心に浸透しています。外資系企業や現地企業が競争しながら、消費者ニーズに応える形で西洋風のメニューや店構えを取り入れる店舗が増加しており、特に学生や若いビジネスパーソンが支持層となっています(※2)。

※1 ベトナムの外食産業:コロナ影響と最新動向の考察【2022年版】

※2 【最新版!】ベトナムの主要レストラン・飲食企業30選~飲食・製造業(食品)業界~

ベトナムの外食産業における主要な競合企業

ベトナムの外食市場には、地元企業と外資系企業が幅広い業態で競争を展開しており、さまざまな飲食の選択肢が消費者に提供されています。以下に、ベトナム市場で存在感のある主要企業を紹介します。

1.ローカル企業

Golden Gate Trade & Services JSC

GoGi HouseやKichi-Kichiといった多様なブランドを展開するGolden Gateは、ベトナムの外食市場で確固たる地位を築いている企業です。現地消費者の嗜好に応じたメニューやサービスを提供し、幅広い年代層に支持されています。

Redsun ITI Corporation

King BBQやHotpot Storyなどのブランドを展開するRedsunも、ベトナム国内で成長を続ける企業の一つです。家族連れや若者に人気の業態を多く展開し、幅広い層の顧客をターゲットにしています。

2.外資系企業

KFC

アメリカ発のファストフードチェーンであるKFCは、ベトナム市場で知名度の高いブランドとして定着しています。現地消費者の味覚に合わせた独自メニューを提供するなど、柔軟なマーケティング戦略で多くの顧客を惹きつけています。

Lotteria

韓国発のファストフードチェーンLotteriaは、ハンバーガーやフライドチキンを主力としつつも、ベトナム市場向けにアレンジされたメニューも提供しています。手頃な価格帯とバリエーション豊かなメニューで、特に若年層に支持されています。

Jollibee

フィリピン発のJollibeeは、ベトナム市場においても成功を収めているファストフードチェーンです。ファミリー層を中心に支持を集めており、現地の食文化に合わせたメニューが人気です。

日本企業が参入する際の課題とチャンス

ベトナムの外食産業は急成長しているものの、特有の文化や市場環境があるため、日本企業が参入するにはいくつかの課題があります。また、日本食への関心の高まりを背景に、多くのチャンスも見込まれます。

課題

現地消費者ニーズの理解不足

ベトナムの消費者は、辛味や甘味など日本とは異なる味の好みや食習慣を持っています。こうした嗜好に対する理解が不足していると、提供するメニューが期待通りに受け入れられない可能性があります。また、ベトナムでは価格競争が激しいため、消費者にとって適切な価格設定を行うことも重要です。

現地スタッフの確保と教育の課題

ベトナムでは人材の確保が難しく、スタッフへの教育やサービス品質の維持が課題となります。現地スタッフを教育し、サービス基準を維持するには、日本の企業文化と現地の労働環境の違いを理解し、柔軟に対応することが必要です。

チャンス

日本食や高品質食材への関心の高まり

ベトナムでは、日本食が「健康的で品質が高い」として都市部を中心に人気が高まっています。寿司やラーメン、天ぷらといったメニューは若年層にも支持されており、ベトナムの消費者にとって日本食は付加価値の高い選択肢となっています。

現地消費者の多様化する嗜好

ベトナムの消費者は多様な食文化に触れたいというニーズが高まっており、日本食もその一つとして受け入れられつつあります。都市部では日常的な外食の一環として日本食の需要が増えており、これは日本の外食ブランドにとって参入の好機となります。

市場参入に向けた戦略のポイント

ベトナムの外食市場で成功するためには、現地の消費者ニーズを踏まえた具体的な戦略が求められます。以下に、成功を目指すための重要なポイントを示します。

1.メニューのローカライズと適切な価格設定

現地の消費者の嗜好に合わせたメニュー開発と価格設定は、日本企業のベトナム市場での成功に欠かせません。辛味や甘味といったベトナム独自の味覚に配慮し、現地消費者に好まれるメニューを提供することが重要です。また、手頃な価格設定を行い、幅広い層からの支持を得られるようにすることがポイントです。

2.デジタルマーケティングの活用

ベトナムではスマートフォンの普及率が高く、SNSは特に若年層に浸透しています。現地でのマーケティング戦略として、FacebookやZaloなどのSNSを活用することで、効率的に情報を拡散できます。さらに、現地のインフルエンサーや口コミを活用したキャンペーンは、ブランドの認知度向上に有効です。デジタルチャネルを活用して、消費者との接点を増やすことが大切です。

3.現地パートナーシップの重要性

スムーズな市場参入には、現地企業とのパートナーシップが役立ちます。サプライチェーンや物流網の活用により、効率的な流通が可能となり、また現地企業との提携で文化や消費者動向を把握しやすくなります。信頼できるパートナーと連携することで、リスクを抑えつつ迅速に市場対応ができます。

4.ブランド価値の訴求

日本の外食ブランドは品質や信頼性において評価が高いです。日本独自の衛生管理やサービス基準を強調することで、現地の消費者に「安心で高品質な食事」としてのブランドイメージを根付かせることが期待されます。現地消費者が日本食に対する信頼を持つことで、長期的な成長が見込めます。

成功例と失敗例から学ぶ:進出時の注意点

ベトナム市場への進出は、大きな成長機会をもたらす一方で、現地の文化や消費者ニーズを理解し、適切に対応することが重要です。日本企業が現地で成功したケースや、逆に苦戦したケースから、ベトナム市場における注意点を学ぶことができます。

成功例

現地の味覚に合わせたメニューのローカライズ

ベトナム市場で成功を収めた企業の多くは、現地の消費者が好む味覚や食材を取り入れたメニューを提供しています。例えば、無料トッピングとして現地で人気のハーブを追加したり、辛味を効かせた商品を用意するなど、ベトナムの食文化や嗜好に合わせた工夫が行われました。このように、現地の消費者ニーズを理解し、柔軟にメニューを調整することが、支持を集める上での鍵となっています。

デジタルマーケティングを通じた現地でのブランド浸透

SNSやインフルエンサーとの提携を積極的に活用した企業も、ベトナム市場でブランド認知度を高めることに成功しています。例えば、若者に影響力のあるインフルエンサーを通じて日本食や日本ブランドの良さを発信し、消費者に親近感を持たせる取り組みが行われました。口コミを重視するベトナムの消費者にとって、こうしたマーケティング手法は特に有効です。

失敗例

現地の文化やサービススタイルへの理解不足による苦戦

ベトナムの消費者は、外食に対してカジュアルかつ素早いサービスを重視する傾向があります。しかし、ある日本企業は日本でのサービススタイルをそのまま持ち込んだため、現地の消費者にはやや堅苦しく感じられ、スムーズな対応を期待する顧客層には違和感がありました。このケースは、現地の消費者が期待するサービススタイルや接客スピードを理解し、適切に適応することの重要性を示しています。

高価格設定によるターゲット層とのミスマッチ

ベトナムの外食市場では、特に若年層やファミリー層にとって手頃な価格が重要な選択基準です。ある日本企業は高品質なイメージを重視した価格設定を行ったものの、一部のターゲット層には高価に感じられ、期待した集客が得られませんでした。このケースは、価格設定が単なる収益確保以上に、ブランドがターゲット層に響くかどうかを左右する重要な要素であることを示しています。

まとめ

ベトナムの外食市場は、経済成長と消費者ニーズの多様化により、外国企業にとって大きな成長機会を提供しています。しかし、現地の文化や消費習慣を理解し、適切に対応することが成功の鍵です。現地の味覚に合わせたメニューの調整や、消費者層に響く価格設定、SNSを活用したブランド認知の向上など、ベトナム市場での効果的な戦略が求められます。

一方で、日本国内での成功事例をそのまま持ち込むことや、現地の期待に合わないサービス提供は、予想外の苦戦を招く可能性があります。ベトナムでの市場参入には、現地の消費者ニーズを踏まえた柔軟かつ戦略的なアプローチが欠かせません。こうした対応が、持続的な顧客の支持を得て、ベトナム市場での成長につながるでしょう。

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