2024-07-19

企業を活性化する従業員エンゲージメント向上の戦略

BtoB 営業・マーケティング　コラム

近年、ビジネス環境は急速に変化し続けており、企業が競争力を維持するためには、従業員のエンゲージメント（従業員の情熱やコミットメントを引き出すこと）がますます重要視されています。従業員エンゲージメントとは、従業員が企業の目標や価値観に共感し、自発的に貢献しようとする意欲や姿勢を指します。このエンゲージメントが高まることで、企業全体の生産性や業績が向上し、さらに従業員自身の満足度や働き甲斐も高まることが期待されます。

企業にとって従業員エンゲージメントを向上させることは、多くのメリットをもたらします。例えば、生産性の向上や離職率の低下、顧客満足度の向上などが挙げられます。これらのメリットは、最終的に企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するための重要な要素となります。

本記事では、従業員エンゲージメントの現状やその重要性を踏まえ、具体的な向上策等について解説していきます。経営層やリーダーシップの役割、効果的なツールなど、さまざまな視点から従業員エンゲージメントの向上に向けた取り組みを探っていきます。

従業員エンゲージメントの現状

現在、多くの企業が従業員エンゲージメントの重要性を認識し、様々な取り組みを行っています。しかし、その一方で、全ての企業が高いエンゲージメントを実現できているわけではありません。実際のところ、従業員エンゲージメントに関する調査結果は企業によって大きく異なります。

例えば、米調査会社の Gallup が実施した調査によれば、世界中の従業員の約70%が自分の仕事に対して積極的なエンゲージメントを感じていないという結果が出ています。このような状況は、企業の生産性や業績に悪影響を及ぼす可能性が高く、対策が求められています。一方で、高いエンゲージメントを維持している企業では、従業員のモチベーションが高く、業績の向上や顧客満足度の向上が見られることも事実です。

従業員エンゲージメントが低い原因は多岐にわたります。コミュニケーション不足、適切なフィードバックの欠如、成長機会の提供不足、働きやすい職場環境の欠如などが主な要因として挙げられます。これらの要因が複合的に絡み合い、従業員が自身の役割や企業に対するコミットメントを感じられなくなってしまいます。

また、新型コロナウイルスの影響により、リモートワークが普及したことも従業員エンゲージメントに大きな影響を与えました。リモートワーク環境下では、従業員同士のコミュニケーションが減少し、孤立感やモチベーションの低下が課題となっています。これに対応するため、多くの企業がオンラインコミュニケーションツールの導入や、リモートワークに適したマネジメント手法を模索しています。

従業員エンゲージメントを高めるためには、現状を正確に把握し、具体的な課題を特定することが重要です。その上で、効果的な対策を講じることが求められます。次のセクションでは、従業員エンゲージメントを向上させるための具体的なメリットとその取り組みについて詳しく解説します。

従業員エンゲージメントの向上がもたらすメリット

従業員エンゲージメントの向上は、企業の成長と発展に直結する重要な要素です。ここでは、その具体的なメリットについて詳しく見ていきます。

1. 生産性の向上

従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が自身の仕事に対して情熱を持ち、積極的に取り組む傾向があります。これにより、仕事の質や効率が向上し、生産性が大幅に向上します。従業員が自身の役割を理解し、企業の目標に対する貢献意識を持つことで、業務に対するモチベーションが高まり、結果として業績が向上します。

2. 離職率の低下

従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員の満足度も高まります。満足度の高い従業員は、企業に対する忠誠心が強くなり、離職率が低下する傾向があります。高い離職率は企業にとってコストがかかり、新たな人材の採用やトレーニングに時間と資源を割く必要があります。従業員エンゲージメントを向上させることで、優秀な人材を長期間維持することが可能となり、企業の安定性が向上します。

3. 顧客満足度の向上

従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が顧客との接点においても積極的かつポジティブな態度を示すことが多くなります。エンゲージメントが高い従業員は、顧客のニーズを理解し、より良いサービスを提供する意識が高いため、顧客満足度の向上に寄与します。顧客満足度が高まることで、顧客のリピート率が向上し、企業のブランド価値が高まります。

4. イノベーションの促進

従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が自発的に新しいアイデアや改善提案を出す傾向があります。これにより、企業内部でのイノベーションが促進され、新製品や新サービスの開発が活発に行われます。イノベーションは企業の競争力を高め、市場での優位性を確保するために重要な要素です。従業員が自身の意見やアイデアを自由に表現できる環境を整えることが、エンゲージメント向上につながります。

従業員エンゲージメント向上のための戦略

従業員エンゲージメントを向上させるためには、企業全体で一貫した戦略を持つことが重要です。以下に、具体的な戦略とその実施方法について詳しく説明します。

1. 効果的なコミュニケーション

従業員エンゲージメントの向上には、企業内での効果的なコミュニケーションが不可欠です。経営層からの明確なメッセージやビジョンの共有はもちろん、従業員同士のオープンな対話も重要です。定期的なミーティングやフィードバックセッションを設け、従業員が自由に意見を交換できる環境を整えることで、エンゲージメントを高めることができます。

2. 認知と報奨制度

従業員の努力や成果を適切に評価し、報奨することもエンゲージメント向上に大きく寄与します。優れたパフォーマンスを示した従業員に対して、賞与や昇進、表彰などの形で報奨することで、従業員は自身の努力が評価されていると感じ、モチベーションが高まります。また、定期的な評価制度を導入し、公平かつ透明な評価を行うことが重要です。

3. 成長と学習の機会の提供

従業員は、自身のスキルやキャリアが成長することに対して大きな関心を持っています。企業が研修プログラムやキャリア開発の機会を提供することで、従業員のエンゲージメントを高めることができます。社内外の研修やセミナー、メンターシッププログラムなど、多様な学習機会を設けることで、従業員は自己成長を実感し、企業に対する忠誠心が強まります。

4. 健康とウェルビーイングのサポート

従業員の健康とウェルビーイングをサポートすることも重要な戦略の一つです。従業員が心身ともに健康であることが、仕事に対するエンゲージメントを高める要因となります。健康保険やフィットネスプログラム、メンタルヘルスサポートなど、包括的な健康支援制度を導入することで、従業員が安心して働ける環境を提供します。

5. 社内文化の醸成

ポジティブな社内文化を醸成することも、従業員エンゲージメントの向上には欠かせません。企業の価値観やビジョンを明確にし、それを全従業員と共有することで、一体感を生み出すことができます。また、多様性とインクルージョンを重視し、全ての従業員が尊重される環境を整えることも重要です。チームビルディング活動や社内イベントを通じて、従業員同士の結束を強めることができます。

従業員エンゲージメント向上のためのツールと技術

従業員エンゲージメントを効果的に向上させるためには、適切なツールと技術の導入が不可欠です。以下に、エンゲージメント向上に役立つ具体的なツールと技術を紹介します。

1. エンゲージメント調査ツール

従業員のエンゲージメントレベルを定期的に把握するためには、エンゲージメント調査ツールが役立ちます。これらのツールは、従業員の満足度やモチベーション、ストレスレベルなどを評価するアンケートを提供し、結果を分析して改善点を特定します。

モチベーションクラウド（株式会社リンクアンドモチベーション）は、従業員のモチベーションを可視化し、エンゲージメント向上のための具体的な施策を導入できるツールです。豊富なデータベースとコンサルティングの知見を活かして、組織の課題を特定し改善することができます。

Wevox（株式会社アトラエ）は、従業員エンゲージメントを継続的にモニタリングするためのツールです。簡単なアンケート形式で定期的にデータを収集し、エンゲージメントの状態をリアルタイムで把握できます。

2. コミュニケーションプラットフォーム

従業員間のコミュニケーションを円滑にするためのツールとして、コミュニケーションプラットフォームが有効です。これらのツールは、チームメンバーがリアルタイムで情報を共有し、迅速にコミュニケーションを取ることを可能にします。

Talknote（Talknote株式会社）は、リアルタイムで情報共有やタスク管理ができる社内SNSツールです。従業員間のコミュニケーションを円滑にし、エンゲージメントを高めるための様々な機能を提供します。

3. パフォーマンス管理システム

従業員のパフォーマンスを管理し、適切に評価するためのシステムも重要です。パフォーマンス管理システムは、目標設定、フィードバック、評価を一元管理し、従業員の成長をサポートします。

タレントパレット（株式会社プラスアルファ・コンサルティング）は、従業員のパフォーマンス管理と育成をサポートするツールです。目標設定から評価、フィードバックまで一貫して管理し、従業員の成長と組織の成果を促進します​ (Recme)​。

4. ウェルビーイングサポートツール

従業員の健康とウェルビーイングを支援するためのツールも重要です。ウェルビーイングプログラムを提供するプラットフォームとして、従業員の健康状態やエンゲージメントを継続的にモニタリングし、適切なサポートを提供します。

ラフールサーベイ（株式会社ラフール）は、従業員のコンディションやエンゲージメントをリアルタイムで可視化するツールです。SlackやMicrosoft Teamsと連携して、従業員の健康状態やエンゲージメントを継続的にモニタリングし、必要なサポートを提供します。

Geppo（株式会社リクルート）はは、パルスサーベイ形式で従業員のコンディションをリアルタイムに把握し、迅速なフィードバックと対策を提供するツールです。パルスサーベイとは、短期間に頻繁にアンケートを実施し、従業員の状態を定期的にチェックする方法です。これにより、従業員のエンゲージメントやストレスレベルを定期的にチェックし、個別対応が可能です。

5. フィードバックと評価システム

従業員の意見やフィードバックを収集し、それに基づいて改善を行うためのシステムも重要です。

ミツカリ（株式会社ミツカリ）は、従業員の適性検査とエンゲージメントサーベイを組み合わせたツールです。従業員の性格や価値観を把握し、適切なマネジメントを行うことでエンゲージメントを向上させます。

Unipos（Unipos株式会社）は、従業員同士が成果を認め合い、ピアボーナスを送ることでエンゲージメントを高めるツールです。従業員のモチベーションを高め、組織内の連帯感を強化します。

経営層とリーダーシップの役割

従業員エンゲージメントを向上させるためには、経営層とリーダーシップの役割が極めて重要です。組織のトップが積極的に関与し、エンゲージメント向上に向けた具体的なアクションを取ることで、全社的な文化の変革と持続的な改善が可能になります。以下では、経営層とリーダーシップの具体的な役割について詳しく説明します。

1. ビジョンと戦略の共有

経営層は企業のビジョンと戦略を明確にし、それを全従業員に共有する役割を担います。ビジョンや戦略が従業員に理解され、共感されることで、従業員のエンゲージメントが高まり、企業の目標達成に向けた一体感が生まれます。

• 透明性の確保：経営層は企業の目標や進捗状況を定期的に従業員に伝え、透明性を確保することが重要です。これにより、従業員は自分の役割が企業の成功にどのように貢献しているかを理解しやすくなります。
• コミュニケーションの強化：オープンなコミュニケーションを推進し、従業員が意見や提案を自由に発言できる環境を整えることが求められます。

2. モデル行動の示範

リーダーシップは、従業員の行動モデルとなるべきです。リーダーが自ら積極的にエンゲージメント向上に取り組む姿勢を示すことで、従業員もそれに倣い、エンゲージメントが自然と高まります。

• 一貫性のある行動：リーダーは企業の価値観や方針に沿った一貫性のある行動を取ることで、従業員の信頼を得ることが重要です。
• ポジティブな態度：前向きな態度やチャレンジ精神を示すことで、従業員のモチベーションを引き上げることができます。

3. 従業員の成長支援

経営層とリーダーシップは、従業員の成長を支援する環境を整える役割も果たします。成長の機会を提供することで、従業員のエンゲージメントを高めることができます。

• トレーニングと開発プログラム：継続的な教育やトレーニングプログラムを提供し、従業員がスキルを向上させ、キャリアを発展させる機会を作ります。
• メンターシップ：経験豊富なリーダーがメンターとして従業員を指導し、成長をサポートすることが有効です。

4. 評価とフィードバック

リーダーシップは、従業員の成果を適切に評価し、フィードバックを提供する役割も重要です。適切な評価とフィードバックは、従業員のモチベーションを高め、エンゲージメントを向上させる効果があります。

• 公平な評価制度：公平かつ透明な評価制度を導入し、従業員の努力や成果を正当に評価することが重要です。
• 建設的なフィードバック：定期的にフィードバックを行い、従業員が自己改善に取り組む機会を提供します。フィードバックは具体的かつ建設的であることが求められます。

5. ウェルビーイングの重視

従業員のウェルビーイングを重視することで、エンゲージメントを高めることができます。経営層とリーダーシップは、従業員の健康と幸福をサポートする環境を整えることが重要です。

• 健康管理プログラム：従業員の健康をサポートするプログラムやリソースを提供し、健康な職場環境を作ります。
• 働き方の柔軟性：リモートワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方を推進することで、従業員のワークライフバランスを向上させます。

経営層とリーダーシップがこれらの役割を果たすことで、従業員エンゲージメントを高め、企業全体の生産性や業績を向上させることができます。エンゲージメント向上は持続的な取り組みであり、経営層とリーダーシップの積極的な関与が不可欠です。

まとめ

従業員エンゲージメントの向上は、企業の生産性や業績、従業員の満足度やモチベーションを高めるために非常に重要です。本記事では、従業員エンゲージメントの現状、その向上に向けた具体的な戦略、ツール、リーダーシップの役割について詳しく解説しました。

エンゲージメントを向上させるためには、まず現状を正確に把握し、従業員の声に耳を傾けることが不可欠です。エンゲージメント調査ツールやフィードバックシステムを活用することで、従業員の満足度やモチベーションの状態を定期的に評価し、改善点を特定することができます。

また、リーダーシップの役割も非常に重要です。経営層とリーダーシップが積極的にエンゲージメント向上に取り組む姿勢を示すことで、全従業員に対する影響力が高まり、組織全体のエンゲージメントが向上します。具体的には、明確なビジョンと戦略の共有、透明性のあるコミュニケーション、公平な評価とフィードバック、従業員の成長支援が重要なポイントとなります。

従業員エンゲージメントの向上には、単なる一時的な取り組みではなく、継続的かつ戦略的なアプローチが必要です。経営層とリーダーシップの積極的な関与、適切なツールの活用、そして従業員の声に真摯に耳を傾ける姿勢が、エンゲージメント向上の鍵となります。